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修二の一連の行動を見ていた浩二は、心配そうに顔をしかめ問い掛けた。自分でも理解していることを他人に指摘されると苛立つのは誰でも同じようで、修二は顔付きを険しくさせる。
「うっせー、ほらさっさと絆創膏取る!!」
半ば八つ当たり気味に修二は怒鳴る。ブチブチと文句を垂れる浩二。修二からの一睨みに、渋々ながら救急箱を取りに身体を動かした。
「しゅーじ」
小さく小さく彰は呟く。無意識の行動だったとはいえ、酷いことをした。修二が拒まれることを何よりも嫌うと、きちんと理解しているのに。
『いやいや、友達じゃないから』
出会ってすぐの頃修二が彰に告げた言葉。当時は何も思わなかった言葉が、刃のように彰の胸を刔る。
修二は自分を偽って人気者を演じている。彰はそれに一目見たときから気付いていた。笑っていない目で、凡てを理解したつもりになって周りを見ている。
だから彰はそれを利用したのだ。人気者の彼ならば、己と上辺だけで付き合うと思った。そして自分自身そのつもりだったのに。
吹っ切れたと思っていた、辛い過去。顔を隠しキャラを演じている時点で、蓋をして隠して見ないフリをしているだけなのだが。
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