9人が本棚に入れています
本棚に追加
ホッと胸を撫で下ろす自分に気付き、修二は自分自身にハッとする。どこに行ったんだろうかと内心で気にしながら、修二はそのまま話に興じた。
「草野はどこ行った?」
「あー、知りません。なあ?」
「あ……あぁ」
昼休みが開けてすぐの授業。結局彰は教室に戻って来ずにいた。教師に居場所を尋ねられ、クラス中が首を横に振る。修二も皆と同じだった。
彰が来ないまま授業が開始され、結局彰は教室へと帰って来ない。それは放課後まで変わらなかった。
修二は級友とのカラオケの誘いを上手い方便で使い断り、彰を探していた。いつもの屋上にもいないし、誰に聞いても見ていないと言う。
「くそ、どこ行ったんだよ」
自転車置場に向かうと、やはりそこには誰もおらず、修二は拳を握る。彰の自転車はここにあり、鞄も教室にあるのに。
もう一度屋上を見てこようと階段を駆け上がっていると、途中の廊下でちょうど彰を見つけた。彰は修二に気付かずに教室へと消えた。
鞄を持って出て来た彰は、修二のいる階段へと向かってくる。そして彰は修二と目が合うと、すっと自然に視線を逸らしたのだ。「桐谷修二、お前など知らない」とでもいうように。
最初のコメントを投稿しよう!