―第一章 臆病な私―

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道中、これから彼に言わなければならないことを思い、私の心は重く……切なくなり……出来れば時をとめたい、なんて叶わないことを思いながら、砂浜に向けて走った――。 やっぱり、時がとまってくれる、なんて願いが叶うことはなく、息切れしている私たちの眼前には、橙色に染まった大きな海が広がっていた。 私は重い口を開く。 「海ってさ、どこまでも繋がっているんだよね?」 いきなりあのことを口にすることは、臆病な……私には出来ず、少し遠まわしに言ってみた。 彼は多分いきなり訊かれたものだから、頭の中でクエスチョンマークが円を描いていることだろう。
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