―第一章 臆病な私―

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足元を見ていた私は思わず顔をあげた。 「ほらっ」 屈託のない笑顔を向けて、私に自分の上履きを差し出してくる男の子。 「あ……りがとう」 男の子の好意を無下に断ることが出来なかった私は、恥ずかしさを気取られないように俯き、男の子の手から上履きをぎこちなく受け取って、その場にしゃがみ込み上履きを履いた。 「さっ、教室に行こう?」 そう言って男の子は私の手を取って走り出す。私は、あっ、えっ、などと言いながら引っ張られるがままに、朝陽の射す廊下を進んでいった――。
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