―第一章 臆病な私―

6/16
前へ
/31ページ
次へ
「太一君……約束したのに……」 私は誰も居ない教室で一人呟き、ひとつ溜め息をついて、彼を追いかけるために鞄を素早く手に持って教室を後にした。 校門を出てしばらくすると忘れもしない、彼の後姿が。私は彼の名前を口にした。そんな私の呼びかけに気付いたのか、彼は立ち止まり、こちらに振り向いてくれた。 私は彼に追いつこうと両足を前へ、前へと進める。 グングン、私と彼の距離は縮まり、やがて申し訳なさそうな表情をしている彼の元に私は辿り着いた。 「太一君、一緒に帰ろうって言ったじゃない……」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加