―第一章 臆病な私―

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私は乱れた呼吸を必死に正常に戻そうとしながら、彼を見つめる。 そんな彼の口から出た言葉は「ごめん、奈緒」 私との約束事を破ったときに、いつも彼が口にする言葉だ。 私はそんな彼のいつもの言葉に少し腹を立て、頬を膨らませてみた。けれどやっぱり、といった感じで、彼を見てしまうとそんな思いもどこかへといってしまい、いつの間にか私は顔が綻んでいく。 「ねぇ、今日もあそこに行かない?」 私がそう言うと、彼は小さく笑って「奈緒はあそこ好きだなー」と言った。 好きなものは好きなんだからしょうがないでしょ! と心の中で思いながらも、私は「故郷って感じがするんだもん」と言っておき、彼と手を繋いで駆け出す。
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