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四月。始まりの季節。
この物語の主人公、白石サクラにとっても、それは例外ではない。
めでたく高校二年生になった彼女は、始業式の真っ最中であった。
物凄く長い校長の話は、左から右へと聞き流される。
ついつい大きな欠伸が出てしまうのは、退屈だとサクラが思っているからだろう。
目に溜まった涙を拭いながら、サクラは前にいる男の結ばれた長い髪を軽く引っ張る。
男は溜め息を吐くと、サクラの方を向いた。
「……何だよ。」
「暇。」
「……だろうな。お前はこういうの苦手だし、つまんないと俺と話をしようとする。」
「……タカシ凄いね!よくわかってる。」
タカシと呼ばれた男は、再び溜め息を吐く。
「何年お前と一緒にいると思ってんだよ。」
サクラは、タカシの髪を弄りながら、尋ねられたことの答えを探し出す。
「……物心ついた時からかな?」
「そ、お隣さんで学校も一緒……そりゃ、お前のことは大体わかるっての。」
サクラの手を自分の髪から離しながら、タカシは大きく頷く。
「運命だね。」
サクラは無邪気な笑顔を浮かべながら、そう呟く。
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