プロローグ

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車を運転する男の名は 佐藤 秋彦 その隣に座る男の名は 佐藤 秋人 彼等は一卵性双生児である 子供の頃から何かある事に勝ち負けをつけ 母親の手を焼いてきた腕白坊主であった 父親は気付いた時にはいなかった 別にいなくても母親が居れば十分だったし どうして僕達にはお父さんがいないの?って聞くこともなかった。 笑っている母親の悲しい顔を見たくないという暗黙のルールだった いつも元気いっぱいの母親が照れ臭いけど自慢だった。 だからこそ 彼女達が母親と仲良くなれたことが 何よりも嬉しかったのだ。 およそ我が家には姑小姑の虐めなど皆無であろう 二人を乗せて颯爽と走る車は キラキラと零れる木漏れ日の中 丘の上に建つチャペルに向けて 山道を進んでいく。急な坂に頑張る車の排気ガスですら 幸せ色のようだった
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