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『だけど 式の時間大丈夫かな?思ってたよりぎりぎりになっちゃったな』
『昨日ちと飲み過ぎたな。マリッジブルーだから 今夜はお互い最後の独身の夜を楽しもうってな具合でハメ外しすぎた』
そう言って煙草をふかす秋彦の顔に焦りの色はない。
窓から入り込む風とマイナスイオンが心地良く頬を撫で 昨日のアルコールが抜けていくようだ。
『まぁ主役が居なきゃ始めようがないさ。瞳と里美には 少し遅れるかもってメールしてるから問題ないだろ』
『まあね』
『しかし 本当辺鄙な所に建てたものだな』
そう言って横目でチラリと白樺の木々を眺めた。
さっきからカーブの連続で二日酔いが更に悪くなりそうだが 得てして運転手は酔わないものである。助手席の秋人は軽く回っているらしい。口数は少なく秋彦の言葉に相槌を打つだけだ
『大丈夫か?酔ったみたいだな。車停めるか?』
秋彦はそう言ったが 車を停められる路肩は暫くなさそうだ。それに先程からバックミラーに車がぴたりとくっついていて 運転手がスーツに白いネクタイをしている所を見ると どうやら同じ目的地らしい。優しい秋彦を前に秋人は勿論 全然平気と応えた。やはり負けたくないのだろう
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