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握り締めた筆を滑らかに流動させる。
マテリアルは無し。
キャンパスは無色。
顕す字は《空》。
先輩の唇が言葉を紡ぐ。
「あめーよ、ルーキー」
僕の動きになにか感じ取ったのか、先輩が踏み込んだ。
甘い?それはそうだ。
だって、これは出方を伺うフェイク。
蹴り……いや、違う。
「!?」
バシュッ!
顔を叩く見えないつぶて。
おそらくは、指先で弾いたのだろう。
つまりは、目潰し。
───が、ここで杉原先輩の計算ミスが生じた。
「あ、そーいやー、眼鏡だったな、てめー」
(やっぱ、あの人バカだわ)
……朔夜の声が聞こえた気がした。
なんとなく、医務室で堀田先輩と相坂先輩が溜め息を吐いてる気もした。
なにはともあれ、活路が拓いたのは喜ばしい。
攻めるのはこの瞬間しかない!
まだ動きのない杉原先輩に詰め寄る。
そして、腕をつかんだ。
とった!!
確信。
ベコッ! グキ!
瞬間、空き缶踏んでグネった。
しかも、すっ転ぶ。その際、足裏が何かを乗せた。
しかし、そんなことを気にする前に後頭部をおもいっきり強打。
あまりの痛さに背筋を伸ばす。
───と、足裏に乗っていた何かを偶然にも蹴りあげる。
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