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だからこそ、続ける。
儂の能力には色々と面倒な制約がついておるが、発動さえすれば非常に厄介なものであると自負はしている。
自分、もしくは無機物に対してのみ有効な文字のちから。
使える文字も時と場合によって限定されるのだが、それはつまり、(ある一つの文字を例外として)そこにある自然物のちからしか使えないことということだ。
ようするに、今ここには、相坂が創った風の残骸が無数にある。
それらを一つに集約して一気に放つ。
筆が滑らかに空気を刻む。
マテリアルは風。
キャンパスは無色(空気)。
顕す字は《矢》。
それを三つ。
「……貫け」
宣言された無情の一言と同時に、風の矢が三本、疾しる。
これで、風の残骸は使い切ったか。
「チィッ!!」
対する杉原は、咄嗟に逃げようとした───が、もう遅い。
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