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反撃の余地も無い。視界がフラッシュしておる。
まずい……このままでは負ける。
倒れる儂の体に馬乗りして小童が殴り続ける。うっすらと開いた網膜には血で濡れた杉原の拳が映った。
本当に負ける!!
思った瞬間、無我夢中で筆を走らせていた。
マテリアルは闇。
キャンパスは地。
顕す字は《穴》。
ガボッ! と地面が陥没する。
とは言ったものの《闇》のマテリアルは夜中、延々と在り続けるが一度に操作できる量は極めて乏しい。
地面に開いた穴も深さは精々数十センチ。
それ故に素早く動くことが要求される。
ただここで逃げるなんて選択肢はとらない。
「な!?」
驚く杉原の眼前に文字を走らす。
吾が陰陽術中、最速にて最弱の一文字。
しかしこの状況なら確実に一撃を与えられる。
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