第三夜

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‐気が進まない‐ 俺は重い気分の中でハンドルを握っていた。 なぜ気分が沈んでいるのか。それは数十分前に遡る。 「この娘達は俺の友達なんだけど、俺達のドライブに付いてきたいんだって」 集合場所に着いて車から降りた途端に、友人の高村がそう告げた。 「でさ、俺達って3人だろ?1人ずつ乗せれば丁度だろ?」 俺が口を開く前に、更に言葉を続ける。 しかも、次々に自己紹介をされてしまった。 今更『ダメ』とは言えない。 俺は渋々ではあったが了承せざるを得なかった。 渋ったのには理由がある。 ドライブ、と言えば聞こえはいいが、俺達は峠を本気で攻める『走り屋』と言われる集団だ。 人を乗せれば、全力で走る訳にはいかない。この日を楽しみにしていた俺は、落胆したのだ。 一通り自己紹介も済み、行き先を決める事になった。 もう走る事を諦めてはいる。だけど、雲行きが非常に怪しい。 どうも心霊スポットの名が挙がっている。 「じゃあドライブを兼ねてあの廃屋にいってみよう」 決定しかけた案に、俺は必死に反対した。 だが、所詮は多勢に無勢。多数決は5対1。 結局、行く事になってしまった。 そんな訳で‐気が重いのだ。
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