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やがて3台の車は山の中腹にある、一軒の廃屋に着いた。
‐ヤバイな‐
建物の中から感じるイヤな気配。
俺の五感が、入るなと警告していた。
だが、それでも仲間は中に入って行く。
「行きましょう?」
俺の車で一緒に来た佐藤さんが、行動を促した。
俺は念の為に、車のライトをつけたままにして中に入った。
住人が居なくなった日を示すかの様に、暦を刻む事を辞めた日めくりカレンダー。
まるで今まで遊んでいたかの様に、散らかっている玩具。
主を待っているかの様に、静かに佇む調度品。
何もかもが違和感だらけだ。
普通に引っ越しをしたなら、こんなにも物を残さない。ガランとした空間で然るべきなのだ。
つまり‐生活臭を残し過ぎているのだ。
「これって…?」
佐藤さんも違和感に気付いたようだ。
この異様な空間に、俺達は言い知れない恐怖を感じた。
あるいはそれは、住人が居るのではないかと錯覚してしまうからなのか。
先行していた2組みは違和感に気付いていないのか、笑いながら2階に昇りはじめた。
俺と佐藤さんは、顔を見合せて仕方なしに後に続いた。
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