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時刻は9時ちょうど
彼女はいつも通り大きなギターを背負っていつものあの場所に現れた
(よかったぁ。)
彼女の登場にホッとしたのも束の間
今度は一気に気まずさが込み上げてくる
(先週シカトしちゃったんだよな。嫌われてるかもな。また手を振られたらどうしよう。シカトはまずいよな。)
いろんな考えが頭の中をくるくると廻っていく
気がつけば彼女はギターを弾き始めていた
いつも通り
今まで通り
彼女は楽しそうに歌う
僕に視線を向けることはない
そうだよな
何勘違いしてたんだろう
僕は一人で舞い上がっていたんだね
本当は少し期待してたのかも
でも人生はそんなに甘くない
そうだよ
僕は彼女の歌ってる姿を見ているだけで幸せ
彼女のあの天使のような笑顔を見ているだけで幸せなんだ
だからこれでいい
やっぱり彼女は楽しそうに歌う
誰一人聴いていないだろう歌を
だけど僕は聴いているよ
僕だけは聴いている
気がつけば目の前に
大粒の雨が叩きつけるように降りだしていた
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