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雨はどんどん勢いを増していく
街を歩く人達は
折り畳みの傘を取り出したり
鞄を傘に走り出したりと
皆雨を嫌うように
逃げるように通りすぎていく
彼女はというと
慌ててギターをケースにしまい
近くの店先にある小さな屋根にギターを庇うように置き
彼女自身もほとんど雨避けにならないような場所で小さい体をより小さくして
雨に濡れないようにしながらじっと空を見つめていた
この雨は止まない
誰もがわかるくらい
力強く降り続ける雨
外は今年1番の冷え込みというだけあって
じっとしていると震え出してしまうような気候だ
(風邪ひいちゃうよ。)
明らかに彼女は寒そうだった
いや
寒いに決まってる
(助けにいかなきゃ。でも嫌われてるかも。)
先週のことを思い出して臆病になる
もし嫌われてたら
嫌われてると知ったら
もう二度と彼女に会いに来れない
そう思うと覚悟が揺らぐ
(風邪ひいちゃう。)
それでも僕は
彼女を助けなくちゃという気持ちでいっぱいになった
会えないとか嫌われてるとか
そんなんじゃなくて
ただ助けなくちゃと
「ごちそうさま。お金置いてきます。」
コーヒー代210円を机に置いて
僕は店を飛び出した
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