暖冬

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待ちに待った金曜日 今日はあの喫茶店には入らず有希が歌うあの場所で有希が来るのを待った 9時ちょうど 有希はいつもと同じ時間通りに現れた 「久しぶり。」 「久しぶり!来てくれたんだね。」 「うん。楽しみにしてた。」 「ありがと。今日はお客さんがいるからなんだか緊張しちゃうな。」 そういって有希はギターをケースから取り出す 「私の歌下手クソだけど笑わないでね?」 「笑わないよ。有希の歌好きだから。」 「聴いたことないくせに好きなの?」 「いいから歌って!」 「じゃあ歌います!オホン!あーあー。よし!」 有希がゆっくりとギターを弾きだす お世話にも上手いとは言えないけれど優しいメロディーに乗って有希が歌いだす ゆっくりとしたバラード 有希もスイッチが入ったのか 曲に入り込み歌っている 有希の魅力は歌声ではなく この歌っている姿だなと改めて思った 曲の世界観を表情や身体全体を覆う空気で表現している 別に歌の専門家でもない僕がこんなことを言うのもどうかと思うが 有希には不思議なオーラがあった 時々僕の顔を見て恥ずかしそうに笑う有希は 本当に天使のように見えた
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