prologue

4/4
前へ
/7ページ
次へ
普通に考えなくとも、正しい行為を行っているのは山賊だ。 理由が不純であるとはいえ、世界のルールに反する二人を捕らえようとしているのだから。 ここに正規軍が居たとしても、山賊は後回しだろう。むしろ正規軍が感謝し、過去の山賊の罪が無罪になる可能性すらある。 だが、それはあくまでもしも正規軍がいたらの話であり、さらに言えば、青年は── 「うらぁぁあっ!!」 ──べらぼうに強かった。 山賊の放つ魔法攻撃を斬撃一つで無力化し、それに怯んだ隙を突いて一度に二人を無力化した。 更にそれに怯んだ者の隙を突いてまた一人……また一人…… ものの五分程度で、およそ二十人の山賊を一人で倒してしまった。 「お前、凄いじゃないか!」 少女が驚きを隠せない表情で青年に向かって来た。 そして勢い良く飛びかかり、突然青年の手を握ってブンブン振り回しながら、 「魔法も一切使わずにこれだけの人数をっ!私なら魔法を使わなければとっくに死んでいたぞっ」 「そう言われたのも初めてだな………手、痛いんだが」 「ん?あ!す、すまない!」 少女はあわてて手を離し一歩後ろへ下がると、「ごほんっ!」となんともわざとらしい咳払いを一つ入れてから、 「【エリー・シューベル】だ。助けてくれてありがとう」 「あんまり困ってた様には見えなかったが?」 「そう気にするな」 「……俺は【ルーク・トリスタン】だ。よろしくな」 「ああ!よろしく!」 二人が互いに手を差し出し、握手を交わそうとしたその瞬間、突然ルークはエリーに倒れかかってきた。 「ど、どうしたルーク?わわわ私たちはつい今さっき知り合ったばかりなのだぞっ!?急にそんな──」 ぐぅ~~~っ……… 「……へっ?」 「は…腹が……減り過ぎて、もう動けねぇ……」 「ル…ルーク………」 【ルーク・トリスタン】と【エリー・シューベル】。 【禁行者】と【賞金首】の出逢いである。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加