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普通に考えなくとも、正しい行為を行っているのは山賊だ。
理由が不純であるとはいえ、世界のルールに反する二人を捕らえようとしているのだから。
ここに正規軍が居たとしても、山賊は後回しだろう。むしろ正規軍が感謝し、過去の山賊の罪が無罪になる可能性すらある。
だが、それはあくまでもしも正規軍がいたらの話であり、さらに言えば、青年は──
「うらぁぁあっ!!」
──べらぼうに強かった。
山賊の放つ魔法攻撃を斬撃一つで無力化し、それに怯んだ隙を突いて一度に二人を無力化した。
更にそれに怯んだ者の隙を突いてまた一人……また一人……
ものの五分程度で、およそ二十人の山賊を一人で倒してしまった。
「お前、凄いじゃないか!」
少女が驚きを隠せない表情で青年に向かって来た。
そして勢い良く飛びかかり、突然青年の手を握ってブンブン振り回しながら、
「魔法も一切使わずにこれだけの人数をっ!私なら魔法を使わなければとっくに死んでいたぞっ」
「そう言われたのも初めてだな………手、痛いんだが」
「ん?あ!す、すまない!」
少女はあわてて手を離し一歩後ろへ下がると、「ごほんっ!」となんともわざとらしい咳払いを一つ入れてから、
「【エリー・シューベル】だ。助けてくれてありがとう」
「あんまり困ってた様には見えなかったが?」
「そう気にするな」
「……俺は【ルーク・トリスタン】だ。よろしくな」
「ああ!よろしく!」
二人が互いに手を差し出し、握手を交わそうとしたその瞬間、突然ルークはエリーに倒れかかってきた。
「ど、どうしたルーク?わわわ私たちはつい今さっき知り合ったばかりなのだぞっ!?急にそんな──」
ぐぅ~~~っ………
「……へっ?」
「は…腹が……減り過ぎて、もう動けねぇ……」
「ル…ルーク………」
【ルーク・トリスタン】と【エリー・シューベル】。
【禁行者】と【賞金首】の出逢いである。
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