Chapter No.1~taboo's~

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空腹で目が覚めるという事はままある事ではあるが、己の腹の虫が鳴る事で目が覚める事は、長い人生においてそうあることではない。 ルーク・トリスタンはそんな希少な経験とともに目覚めた。 気が付けばベッドの上。 ルークはベッドに横になったまま部屋を見回した。 おそらくはどこかの町の安宿だろう。部屋に備え付けの家具も決して良い物とは言い難い。 そしてテーブルにつっぷくする様に寝息をたてている少女が一人… 「…エリー・シューベルって言ったか…?」 「…ん」 まるでタイミングを見計らったかの様に目を覚ますエリー・シューベル。 「んっ、起きたのか。善意から代わりに戦ってくれたのには感謝するが、体調管理も大事だぞ。覚えておけ」 起きて早々に説教を始めるエリー。 このとき、ルークの直感が彼にこう告げていた。 こういう人間に説教をさせるな。異常に長くなるぞ。 …と。 「ああ、分かったから。ところで、ここどこだ?」 「ルーンソルトだが?」 ルーンソルト。 ルークがとりあえずの目的地としていた町であり、もっとも新しい記憶――エリー・シューベルと出逢った場所からは、徒歩でおよそ三日かかる町だ。 「んじゃあ俺は三日も寝てたのか?」 「いや、半日も寝てないな」 「は?んじゃどうやってここまで――」 「飛んできたに決まっているだろう」 「飛んで?」 「ああ。飛行術使えばすぐにつく距離だしな。……疲れるが」 なるほどなぁ~っと頷くルーク。 確かにそれならば合点がいく。 ルークは魔法を使えないので、空を飛ぶ事も出来ない。とても思い付かない方法だった。 「それよりも、お前、お腹が空いているのだろう?」 「ああ。何か食い物無いか?」 「少し待ってろ。今、何か作ってやろう」 エリーはそう言うと部屋を後にした。
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