エンターキー

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23才の頃、電話を使うバイトをしていた。 ある日、事務所に行くと、松本主任(当時25才)が、パソコンにデータを入力されていた。机の上には山になったタバコの吸い殻と、缶コーヒーの缶が数本転がっていた。片時も離さずタバコを吸い綴られていた。誰も側に寄らない。何か、とても不機嫌だった。 突然、松本主任が叫ばれた。 「よっしゃ~!できた~!」 そして松本主任がボンとエンターキーを押された途端、事務所の電源が落ちた。ランでつないである10台ぐらいのパソコンも画面が消えた。 すると、いつも週1日しか出勤されない上司の方が、いすを蹴り上げて立たれ、 「こら~!松本!お前何やった!!」 「何もやってません!エンターキー押したら電源が落ちました!」 「アホかぁ!エンターキー押したぐらいで、電源落ちてたまるか! A、 Bお前らカーテン引け。C、 D、お前ら見張り立て。E、予備の電源入れろ。5分で復旧せえ。」 「はい!!」 本当に、5分でパソコンの画面が復旧された。事務所の電気も。 その途端、上司の方が糸が切れた人形のように、ドサッと腰を降ろされ、 「こんなことがボスに知れたら、俺、コロされる。 A、俺のかばんから、安定剤持ってこい。B、 水持ってこい。」 「はい!」 およそ一分でモノは揃った。 上司の方は、ビンに入った安定剤をごっそりと手のひらに受けとめられ、一気に水で流し込まれた。そして、怒りを隠した静かな口調で、松本主任を呼ばれた。
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