朋哉の想い

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唇をかみ締める。 じわっと口の中に鉄分の味が広がった。 ぐっと怒りの感情を押さえ込み、口を開く。 「郁哉の病室には顔を出さないで下さい」 「ん、私は院長だよ?」 「もう退院を待つだけです、顔を出さなくてもいいじゃないですか」 院長は俺を鼻で笑った。 「朋哉君は本当にいい子だ」 (こいつの言葉を聞くな・・・) 「両親も弟も朋哉君の事を自慢したくなるくらい、いい子だよ」 (ウルサイ・・・) 「そんな君が、親にも黙って進学先を変えるなんてな」 (黙れよ・・・) 「親よりも五十嵐君が一番ショックだっ・・・」 ダンッ!!! 俺はソファの前のテーブルに拳を勢いよく叩きつける。 用意してあったコーヒーカップが倒れ、テーブルの上にコーヒーがこぼれる。
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