朋哉の想い

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カランッ 倒れたカップが床へと落ちた。 俺はカップを拾い、受け皿へと戻した。 「すみません、コーヒーこぼしてしまいました」 俺は机に視線を落としたまま、侘びを言う。 「別に構わないよ、私が喋り過ぎたみたいだ」 そう言っているものの、見てなくてもどんな表情をしているのかわかる。 俺を見下し、笑っているはずだ。 「そろそろ失礼します」 俺は院長の顔は見ず、頭を下げドアに向かって歩き出した。 「朋哉君、ありがとう」 俺は歩みを止めずに歩く。 「本当にありがとう、息子も喜んでいるよ」 俺はドアを開け、院長室を出た。 「ははははっ!」 ドアの向こうからは院長の笑い声が外にまで漏れてくる。 また唇をかみ締める。 「・・・今に見てろ」 ボソッと呟き、俺は歩き出す。 俺の人生はこの院長によって、大きく変えられた。
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