麻結の想い

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「すみません、その日は友達と用事あるんです」 私は野球ボールを拭きながら、愛想笑いと言うか作り笑いをしていた。 もうこの台詞も何度言っただろうか。 そろそろこの理由も限界だろう・・・ 「え、そうなんだ?残念だな」 それにしても、何度断っても懲りずに誘ってくる。 いい加減、気付いて欲しい。 私が嫌がっていることに・・・ 「もしかして、俺嫌われてる?だからいつも断られるのかな?」 「そんなことはないです。たまたま用事があるもので・・・」 もう本当の事を言ってしまおうか。 あなたの事が嫌いです、二度と誘わないで下さいと・・・ 「また誘うよ、それにしても今日も麻結ちゃんは可愛いよね」 私は何も答えず、笑顔で返す。 「圭太、そろそろ練習しろよ」 グランドからベンチに声がかけられる。 「あん、うっせーよ。わかったって」 面倒くさそうに、グラウンドからの声に反応する。 そして舌打ちをした。 「チッ、今いいとこだったのによ」 (はぁ?どこがいいとこだって?さっさと練習に行ってよ) 顔と気持ちが合っていないだけに、私はイライラしていた。
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