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ようやく隣に座っていた先輩がベンチから腰を上げた。
「あー、だりいなぁ」
先輩はダラダラとグラウンドへ歩いて行く。
「はぁー」
私はある程度先輩が離れたのを確認し、ため息を付く。
そして溜まったイライラを吐き出すように、力を込めてボールを拭いた。
私は野球のマネージャーをしている。
さっきまで隣に座っていたのは佐々木圭太。
私はこの先輩が大嫌いだ。
あまりいい噂がない。
佐々木さんはどこかの病院の院長の息子。
金持ちのボンボンだ。
しかし、野球の実力は金で買っているわけではない。
今、五十嵐君とバッテリーを組んでいるのは実力なのだ。
「五十嵐君には沼倉君が一番お似合いだもんね」
ボソッと呟き下を向きながらボールを拭いていると、視界が暗くなる。
誰かが私の目の前に立っているようだ。
(う、野球部員!?今の聞かれちゃったかな・・・)
私は恐る恐る頭を上げた。
「こんにちは」
目の前にはさらさらの栗色の髪をなびかしている、女性が立っていた。
私は知らない女性に対して驚きつつ、挨拶を返した。
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