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「あら、ノラさん」
レンガブロックの上を歩いていると、妙にツヤツヤした声のメス猫に呼び止められた。
毛繕いでもしているのだろう。青い屋根に腰かけ、白い足をペロペロと舐めながらこちらを見ている。
彼女はこの家の飼い猫で、名はダイアナ。
人間の言葉で「月の女神」という意味だ。
…なんとも大袈裟な名前である。少しは我輩の質素さを見習って頂きたい。
彼女が大袈裟な名前を持つ、理由は一つ。
…彼女は「飼い猫」なのだ。
「ノラさんは、まだ独り身なのかしら?」
ここで言う「独り身」というのは、伴侶がいない、という意味ではない。
そもそも猫は結婚しない。
伴侶がいないということは、「人間に飼われていない」という意味だ。
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