匂い

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匂い

T施設での話 その日も 夜勤だった。 老人施設の現場は 元気に退院なんて ほとんどなく 来年… 来月… いや明日の笑顔も 見れないかもしれない。 私なんで こんな仕事してるんだろう。 手をさすり 背中をさすり 消えかかろうとする 命を 私は引き止める。老人には家族はあまり 延命を望まず 自然にして下さい。と申し送られる。 それでも私は 「元気になるのよ」と声をかける。その声が 聞こえたのか 臨終には 一度も 立ち会ったことがない。 次に出勤すると…あなたが 帰ったあとで… と申し送りを受ける。 そんな 死に神が隣りに座っていそうな職場には 不思議な現象の一つ二つあっても おかしくない。
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