1131人が本棚に入れています
本棚に追加
「無様ね……仮にもルイネスト家の末裔なら、こんなゴミに打ち負かされる事は恥と知りなさい」
精神に直接、凛乎とした女声が響いた。同時に、激しい頭痛が彼を襲う。彼は苦悶の表情を浮かべながら、朦朧とする意識を必死に繋ぎ止める。
「ねえ、ジュリアス。あんたはこれで満足? こんな腐敗した国の一国民として、理不尽に暴虐の限りを受ける生活は、本当にあんたに相応しいもんだと思うわけ?」
自らの名を呼ばれ、ジュリアスは重い瞼をこじ開ける。眼前には相変わらず、暗澹とした闇ばかりが広がっているが、彼はそこに『何か』の存在を感じた。
「私の手を掴んで。ああ、やっぱりルイネストの血は美しいわ……あんたのは、特に」
手を伸ばしたジュリアスは、光に貫かれて窒息する。意識が混濁する中、彼は何か柔らかいモノが唇を塞ぐのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!