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何処からか漏れてくるノリノリで下手くそなウタ声がオレを愉快にさせる。
左に曲がり、ぼんやりと青い紳士型のマークが目に入ると、少しだけ冷静になり、愉快に加えて少しうれしくなった。
「ヘヘへ……」
ここはやっぱり5階だ。
今日便所に来たのは何度目のことだろうか。
用をたして鏡をのぞくと、少しだけ目の周りが赤い、それなりのオレが映っていた。
自分の顔に触れてみると手のひらも顔の皮膚も、サイズが微妙に合わない借り物のスーツのように違和感を感じる。
いきなりバコンッ! と個室のドアが勢いよく開いた。
オレは酔っていて驚きはしなかったが、目を疑った。
そこから出てきたのは女だったのだ。
でも、もしかしたら女の格好をした男なのかもしれない。
今のオレが判断するには、もう少し近くで見なければわからない。
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