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カツコツとヒールを鳴らして、壁づたいにこちらに向かってくる。
腰のくびれから弧を描くように膨らむラインは膝許ですぼまり緩いアールを描き足首はへし折れそうに細く黒ラメのヒール。
ほのかに柔らかい香りが漂い、女であることを、酔っているオレの脳ではなくて本能が感じとった。
女は男用の便器に腰をぶつけてよろけた。
やはりここは男便所だった。
女がゆらゆらと揺れているのは、オレが酔っているせいなのだろうか。
女がオレに向かって歩いてくる。
オレは鏡の前に立っているが、その女は手を洗うためでもなく、化粧を直すためでもなく、オレのことを虚ろな目で見つめながら歩いてくるのだ。
すると近づいてきた女が、オレの目の前で足をもつらせてバランスを崩した。
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