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5時になり外へ出ると空の向こう側が少し明るかった。夜と朝の境目だ。こういう空は好きだった気がする。
駅前のロータリーで仲間たちと解散した。電車が動き出している。出勤するのであろう大人たちが駅に吸い込まれていく。死人のような顔で。
そんな光景に徐々に酔いが冷めていく。この大人たちは何のために生きているのだろう。いずれオレもこんな顔をして生きていかなければならないのだろうか。絶望に似た脱力感に襲われる。
「ケージ、お水買ってきたよ」
マミがミネラルウォーターをオレに差し出した。
オレは水で口を濯ぎ吐き出した。そんなオレを横目にサラリーマン風の男が通り過ぎる。
見下されたようでくやしくなり、煽るようにペットボトルを傾ける。よく冷えたさらりとした水がオレの中を通り抜ける。これは酒じゃない。逃れられない現実なのだと実感する。
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