プロローグ

2/6
前へ
/111ページ
次へ
  誰も知らない、本当の自分。   誰にも知られたくない、本当の自分。   誰にも見せない、本当の自分。   俺を知ってほしいのに、俺に踏み込んでほしくない。   俺を理解してくれるのは、アイツだけだから。   アイツの影を追い続ける。   追い続ける度、自分に嘘を塗り重ねる。   自分に嘘を塗り重ねる度、本当の自分が見えなくなる。   俺も俺を理解していないのに、他の誰にも俺を理解してほしくない。   誰にも、俺の根を見られたくない。   だから水面の下にそれを隠す。   嘘の自分から根を伸ばし、自分を失わないようにする。   そうしていくと、俺も俺の根が見えなくなる。   誰にも、俺の根を知られなくなる。   水面に浮かぶ、睡蓮のように。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3070人が本棚に入れています
本棚に追加