プロローグ

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蓮寺『えぇ…小吉…?』 一月一日。 年が明けた気分爽快な今日、初詣のおめでたい空気の中俺が手にしたおみくじには"小吉"の文字。 麗奈『やった、大吉~♪』 優『あ、俺も大吉。』 すぐ隣から聞こえてきたのは、クソカップルの腹立たしい声。 蓮寺『…何故俺が小吉…?』 優『でも小吉って悪い結果ではないだろ。』 クソカップルの片割れその1、クソイケメン(ゆう)のフォロー。 大吉の野郎に言われたらなんかバカにされた感がする。 不満気な顔してると、その優の隣にいた巨乳美女がニヤリと笑う。 麗奈『「とりあえず小吉やるからまぁ頑張れや」ってことじゃない?』 クソカップルの片割れその2、クソ幼馴染の麗奈(れな)が小馬鹿にしながら俺を覗き込む。 俺が小吉でコイツらが大吉ってのが気に入らない。 蓮寺『おい何だよ、朝っぱらから誰かさんにたたき起こされて無理矢理初詣に連れてこられたかと思えば…。』 優『いや…だから小吉も悪い結果じゃないって』 顔面大吉の優に慰めされても嬉しくねぇんだよなぁこれが。 麗奈『いいじゃん、レンにはそういう地味な幸せが似合ってるよ。』 蓮寺『いや現在進行形で全ッ然幸せじゃないんだけど。』 大きくため息を吐き、今日この初詣に来たことをもう何度目か数えるの忘れたくらいには再度後悔した。 今日の朝、爆睡していた俺は麗奈にたたき起こされた。 俺が寝ぼけた脳細胞を活性化させるよりも先に、 「初詣行こうよ!」 と、小学生の夏休みバリのテンションで連れ出されたのだ。 もちろんそこには優もいて、今日一日またこのクソカップルのバ会話に付き合うだと悟ると── 蓮寺『…はぁぁ…。』 それはそれは深いため息を吐くしかない。 クソカップル共はそんなわざとらしいアピールにも全然気付かないフリしてる。 麗奈『さ~、優、レン、次はどこ行こっか?』 蓮寺『レン君はウーマンハンティングに行ってきまぁす。』 そう言い、さっさとこの空間から抜けだそうとするが…、まぁ当然ながら麗奈に服を掴まれ阻止された。 麗奈『ちょっと、まさか今日もナンパ~!?神様に怒られるよ!?』 蓮寺『小吉叩きつけてきた神様になんざすでに怒られてるようなもんだろうが!!』 初詣に来るような子は大体が若々しいピュアハートを持ってるって相場で決まってる!!だから俺はその女の子達を狩るッ! 俺の必死の抵抗と熱意に呆れたのか、麗奈は掴む手を離して俺を解放する。 麗奈『はぁ…もう勝手にしたら…。』 蓮寺『まってな!プリティーモンスター達!』 そうして、俺はこの二人から逃げ出すことに成功したのだった。 …とは言ったものの、今日はあまり気分がのらない。 辺りはもはや軽い祭のように出店などが並び、友達同士や恋人同士がワイワイと騒いでいる。 …こんなとこで何一人でいるんだ、俺…。 かと言ってアイツらのとこに戻る気はない。 アイツらもカップルなんだから、そんな中に俺が混じるのは気分が悪い。 …それは…普通、なんだよな。 アイツと優はカップルで、その中に混じりたくないと思うのは…普通…のハズだ。 そんなことを思っていると、不意に俺の腕が誰かにぶつかる。 慌ててそのぶつかってしまった人を見れば、どうやら女の子のようだ。 蓮寺『っと、悪いな…あ…?』 …瞳孔が開くって感覚は、こういう感じなのだろうか。 その女の子は…アイツに…麗奈にそっくりだったから。 ふざけている。 アイツのことを考えていたら、アイツにそっくりな奴とぶつかっただと? いくらなんでも…ふざけている。 『あ…いえ、大丈夫です。』 その女の子の声で、俺はコチラに戻ってこれた。 …よく見れば、その女の子は小、中学生ほどの体格で…アイツに似てると言っても、それはこの長く綺麗な黒髪だけだった。 …スタイルだって、全然違う。 この女の子はチビで、ぺったんこで、間違ってもナイスバディとは呼べない。 蓮寺『…あ、あぁ…悪かったな、じゃあな。』 そう言い、俺は歩き出す。 何故あんな女の子とアイツを見間違えた? 中学生時代のアイツと比べても、別に似てやしなかったぞ? 蓮寺『…はぁ…。』 ダメだ、なんか今日は調子悪い。 帰ろう。 帰って寝よう。 そうすりゃ、またいつもの俺に戻れる。 …"嘘"の俺に…。 由紀『あ~!!蓮寺さ~ん!!』 聞き覚えのある、またも喧しい声が聞こえる。 その声がする方を見れば、由紀ちゃんと咲ちゃんがいてコチラに手を振っていた。
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