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マフラーを巻いてもらって、ずいぶん暖かくなった。
電車が雪で遅れてるらしいので、駅の中の椅子と暖房が置いてある所で雪が降るのを眺めながらアタシ達は話していた。
「なぁサチ」
「何?」
「お前毎日よく飽きずに落書きしてたな」
「えっ? あれ全部読んでたの?」
「あぁ読んでたよ。俺が休み時間に自分の教室に居ないのはLL教室に行ってるからだしな」
「そうなんだ……って、だったら返事してくれてもよくない? 毎日寒い思いして書いて、しかもそのせいで友達と帰れなかったんだからね」
そう言うと、リュウはアタシの肩を抱き、
「悪かったな。寒い思いさせて」
と言った。
こういうことに免疫力がないアタシはつい顔を赤くしてしまう。
「ちょ、ちょっと! 何してんのよ!」
「ダメなのか?」
「ダメじゃないけど……、アタシこういうの慣れてないし……」
「それは俺もだ。それよりサチ。一つ聞いていいか?」
「な、なによ」
「サチの好きな言葉って何?」
「何それ、今関係あんの?」
「いいから答えて」
「ならリュウも言ってよ」
「は? 俺のは別に聞かなくても分かるだろ?」
「いいから、同時に言おうよ」
「ったく、しょうがねぇなぁ」
リュウも渋々納得してくれたので、息を揃えて同時に言う。
「「Forever love」」
リュウは少し黙り、それから、
「ありがとな」
そう言ってアタシに口づけした。
「じゃあもう電車きたし、行くわ」
真っ赤になってるアタシを置いてさっさと行ってしまうリュウ。
慌ててそれを追いかけ、電車に乗ろうとしているリュウに叫ぶ。
「アタシ、リュウの事大好きだから! だから……、必ず迎えに来なさいよ!」
今度はリュウが赤面する番。
これはアタシのファーストキスを奪ったお返し。
電車が見えなくなるまでアタシはそこにいた。
──これは、何気ない落書きの物語。
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