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週2回の移動教室。アタシ達は気怠げに廊下を歩いていた。
「まったく、何で移動教室なんてあるかなー」
「そうそう、疲れるし、大したことやんないしねー」
「どうせ教室変わったってウチらやること変わんないしね」
「ケータイいじってるだけ? みたいな」
「だよねー!」などと相づちを打ち、ケラケラと笑っている。そこには品、というものが全く感じられない。
かく言うアタシもその中の一人なんだけどね。
横を、そこそこ長身の男が通り過ぎた。
その男の人が視界から完全に外れた辺りで、友人の一人が話し出す。
「ねぇさっきの人カッコよくない?」
「そうかな? スタイルと身長は良かったけど、顔が今一パッとしないってゆーか……」
「出たっ。サチの辛口評価」
「サチ」ってのはアタシのあだ名。
「三浦 幸子(ミウラ サチコ)」だから「サチ」。
でも、正直自分の名前があまり好きじゃない。ダサいし、なんか昭和? みたいな。
「ホント、サチの評価は厳しいよねー。そんなに男に理想持ってたら一生彼氏出来ないぞっ」
地味に痛いとこ突いてくる。でも、今は彼氏欲しい気分じゃないし、全然平気。
「いつになったらサチに『欲しい気分』が来るのかねー」
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