机の上の世界

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呼び方も『アンタ』から、 『龍也』、『リュウ』へと変わっていき、また向こうも『お前』から、 『幸子』、『サチ』へと変わっていった。 そうして数ヶ月が経ち、季節が夏から秋へと変わる肌寒い季節。今や大嫌いな移動教室が一番の楽しみになっていた。 でも、 『ねぇ、何で会えないの? 一度だけでいいからさー。顔見るだけ! ね?』 『何回言ったらわかんだよ、相変わらず諦め悪いなサチは(笑)』 アタシはいまだにリュウの顔を一度も見たことがなかった。 向こうは見たことあるらしいので、何だか負けているようで悔しかった。 メールぐらいはと思って誰かに見られるかも知れないと分かっていて携帯のアドレスと、 『メールしよ?』 なんて書いてみたが、相手からの返答は、 『わり、俺携帯持ってねぇんだ』 だった。 そんな訳あるか! なんて文面を見ながらツッコんだが、応えが返ってくるわけでもなかった。 そしてそれは逆にアタシの興味をひき、 『見たいの! お願い! 何でも言うこと聞くから!』 なんて言ってしまった。 『じゃあ……、俺と付き合えよ』 その文を見た時、正直嬉しかった。でも相手の顔も分からない。それなのに承諾してしまっても良いのだろうか。もし相手がキモいヤツだったら? そもそもこれは本気なのだろうか? アタシの中で葛藤が起こっていた。
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