時雨坂

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「どうだ、一杯やってくか?」 関所番の仕事を終えての帰り道、吉次は馴染みの小料理屋の前で立ち止まった。 「うむ…そうしたいのは山々だが、ちと懐具合がな…」 五平太は、探るまでもないほど軽い懐を探る。 「なんだ、又、女にでも使ったか?まぁ構わんさ、勘定は俺が持つ。少し付き合え」 吉次は無類の酒好きで、年はもう五十近いはずだが、その飲みっぷりは、来年三十になる五平太の及ぶ所ではない。 「俺はもう、女はいかんが、なぁに¨これ¨さえあれば生きるのに楽しみはあるさ」 口癖のように言う。
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