一章 帽子屋

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「あ……朝……?」 差し込んできた陽光に目を細めると、陽光に逆らうようにちょっと寝返りを打つ。 途端 (き、きゃぁああ!!?) 眼前に金髪で整った顔があった。 まるで添い寝をしているような。 と、考える前に体が動き、ベッドの逆側から脱出する。 「な、ななな……」 こっちの心臓が破裂しそうな程脈打っているのにも構わず、ベッドの上の人物は穏やかな寝息を立てて眠っていた。 (なんでエリックが私と同じベッドで、寝てるのよーー!) 自分の様子を見るに、何も変な事はされていないようだが、どうもこうも心臓に悪い目覚めだ。 「……お?なんだアイリス、起きたんか?」 扉を開けてエドガーが入ってくる。 今は黒いワイシャツや腰エプロンはしておらず、薄手のシャツにコートを羽織っていた。 「なな……なんで、エリックが……」 ベッドの下の床で座り込んでいる私を見ると、まるで哀れむような視線を向けてくる。 「わりぃな、びっくりしたろ?………兄貴の奴、眠い時は誰が寝てようと近くにあるベッドで寝ちまうんだよ」 「はあ!?……あ、むぐ」 思わず声を張り上げかけたが、エリックが寝ている事を思い出し、両手で口を塞ぐ。 「はは、大丈夫だって。一回寝たら、誰が起こそうと突っつこうが、蹴ろうが、殴ろうがしばらくは絶対起きねぇから」 あっけからんと答える。 「………」 おそらく上にある「蹴ろうが殴ろうが」と言うのは、既に実行済みなのだろう。 「着替え欲しいだろ?来いよ」 「……う、うん」 立とうとすると足がふらついたが、気合いで立ち上がった。 ズキズキと痛む体。 (……なんで私、こんなに傷だらけなんだろう――……) そう思いながら、エドガーの後ろをついていく。
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