一章 帽子屋

8/15
前へ
/18ページ
次へ
「……ねぇ、エドガー」 「あ?何?」 肩越しに頭だけ振り返る。 アイリスは、にっこりとしながら嫌味を込めて言い放つ。 「誰が私の事、着替えさせたの?」 確かに自分は森の小道に泥だらけで倒れていた。エドガーが言うには、エリックが拾ってくれたと言う。 そして、今自分はだぼだぼの青いパジャマを着ている。 髪も泥どころか、艶があり、サラサラだ 「もしかして、エリック……?」 その瞬間、「はあ!?」と言うと勢いよく振り返る。 「違うっつーの!!兄貴はお前みたいな女に興味ねぇって…」 「それも、どういうことかな?」 「――…」 アイリスの気配が冷たくなった事を感じると、頭を掻いた。 「チッ……使用人だよ、使用人!!!俺達の家には何人か、使用人が居んの! 分かったか、ブス女」 「……しよう…にん?」 聞き慣れない言葉に、もう一度聞き返す。 「貴方の家、使用人が居るの!?」 「意外」と言うと、エドガーの目が鬱陶しげに細められる。 「居ちゃわりぃかよ……」 むすっとすると先を歩いていく。 「わ、待ってってば」 慌ててエドガーの後を追う。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加