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「こ…こんな感じ?」
膝中間まである赤いスカートを翻して白いブラウスのしわを軽く伸ばす。
長い金髪は上の髪を少し取って括り、残りは腰の方へ流した。
試着室のカーテンを開いてその服をエドガーに見せると、感心したように軽く拍手をされ、苛立ちを覚える。
エドガーはソファーの上に寝そべりつつ、紅茶をすすっている。
つまり、態度が悪い。
「動きやすく、かつシンプルで邪魔にならないもの」というよく分からないエドガーの注文を受け入れて懸命に探したつもりだった。
しかし、今までに見たことがないくらい広いクローゼットの中に並べられた大量の服から一つのモノを選ぶのに普段では考えられない位途方もない時間を有し、初めはちゃんと座って待っていたエドガーも、だんだん崩れてきてこうなったのだ。
「まあ、ブス女が多少良くなっただけマシか」
紅茶をテーブルの上に戻して首を鳴らせ、自分の一つに括った茶髪を肩口に持ってくると、
欠伸を噛み殺し、ソファーに肘をつく。
「それは、どうもありがとう」
エドガーの憎まれ口ににっこりと笑って返す。
正直、口論を展開さえたいところだが服を貸して貰うという恩がある為、ここは耐えなければならなかった。
「お?素直に礼を言うなんて………気持ち悪いな」
物珍しそうな顔で見上げてきて、眉が反応して吊り上がり、口元が引きつる。
「少し位はあなたにも感謝してるの」
「おぇ……気色わりい……」
「前言撤回しようかしら」
ニコニコと笑いながらそっぽを向くと、頭に痛みを感じ、突然後ろに仰け反る。
「い、いたたたっ!髪の毛引っ張らないで!」
「うっせ、ブス女」
正面を向かせられると、エドガーは自分の上着のポケットを漁り、小さな箱を取り出す。
手のひらに収まってしまう位の箱から何かを摘み上げると、ソレをブラウスのポケットにとりつけた。
「バッチ……?」
「ん、まあな」
青い宝石がトランプのスペード型に小さく加工されたバッチ。
明らかに高級な物らしく、金で縁取られていた。
思考が一瞬停止し、そして我に返ると顔を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってくれる?どういうこと!?」
バッチを取り付けると、上着のポケットに手を突っ込み、鼻歌を歌いながら部屋を出て行ってしまったエドガーを追いかける。
「あ?んだよ」
「こんな高価な物……どうして?」
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