序章 罪の行方

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『アイリス・ヴェルディ』 黒いガウンを着た裁判官達の前に鎖に繋がれた少女が引き出される。 長いプラチナブロンドの間から紙のように白く衰弱した肌が覗く。 鮮やかな緑を写した瞳はもはや輝く事はなかった。 白い肌には拷問器具で痛め付けられた後が生々しく残っている。 裁判官の一人が咳ばらいをすると、巻物状に丸められた紙に書かれた文を一通り読み上げ、問う。 『今までの証言に嘘偽りはなきか?』 「………はい」 痛め付けられた後の喉からは、か細い声しか出ない。 自らのプライドだけでその場に立っていた。 決して倒れる訳にはいかない、孤独な戦いだった。 『アイリス・ヴェルディ。そなたには即刻死刑を命ずる』 裁判長が威厳を持って言い放つ。 (…ああ…良かった) 静かに目を閉じた。 自分はやっと死ぬことが出来るのか。と安堵した瞬間、裁判官の一人が立ち上がった。 「裁判長、お待ちください」 『……何じゃ』 「アイリス・ヴェルディには即死刑でなく、執行猶予を与えては頂けないでしょうか」 「………!?」 (……何を言ってるの…!!余計な事しないで) そう言ったつもりだったのに、声が枯れて出ない。 「死刑囚と言えど、まだまだ幼い少女。それを少しばかり時間を与えては如何でしょうか」 『うむ………良かろう。アイリス・ヴェルディ。そなたに死刑執行猶予を与える』 (……嫌よ!!!) 両脇を黒いマントを着た男が持つ。 (……離して…離してぇ!!!) 『しばらくの滞在先はどうしようかの…………おお、あそこが良い。あそこなら、心身ともに安らぐ事が出来よう』 (嫌!!!嫌……嫌!!!) 『スウィートランドへ搬送せい。そうだな……記憶は封印しておくか』 「………やめっ!!!」 ぐっと裁判官の一人の手の平が頭を掴む。 (私は早く死にたいのよ!!!!) 全身の力が抜け、視界が白く染まる。 虚しい願いが喉で止まり、それ以上出て来なかった。
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