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「エドガー、それくらいにしなさい」
片手にお盆を持ち、もう片方の手で開け放たれたドアを叩いたようだった。
「あ、兄貴……」
金髪に透き通った綺麗な青い目に、パティシエの白いエプロンをしめた青年は、エドガーを制するとすたすたと歩み寄って来た。
「ウチの者が何か失礼な事を致しませんでしたか?お嬢さん」
やんわりとした口調で思わずうっとりするような笑みを浮かべる。
肌は白く、鼻筋が通った顔はこれ程綺麗な人を見たことがない程整っている美しい青年だ。
「兄貴……その手に持ってるのは……」
青年は「ああ」と言うようにお盆を見ると微笑した。
「せっかくだから、お嬢さんにも私のスウィーツを味わって貰おうかと思ってね」
エドガーの顔がこれ以上にない程引き攣って凍り付く。
青年は紅茶ポットとカップをベッドの脇のテーブルに一旦置くと、お盆ごとケーキを膝上に置いてくれる。
雪だるまみたいで真っ白なケーキだ。
「紅茶はいかが?お嬢さん」
「あ……頂きます」
「だーー!!駄目だ駄目だ!!」
青年の手からカップを奪い取る。
「エドガー……お客様の前で見苦しい事は……」
「兄貴!!これダージリンだろ!?っつー事は、これあの人に持って行くやつだったんじゃ……」
スッとエドガーからカップを奪い返す。
「エドガー。私はいつもお客様には最高のモノを出すよ。お嬢さんにも対してもそういうつもりでいるんだよ」
うぐ……と、不満そうな顔で縮みこまる。
「……さあ、お嬢さん」
食べてみてと促され、一口分を口にする。
「……あ」
「どうかな?」
「……お…美味しい…です」
「それは良かった」と、とても嬉しそうに笑う。
スポンジ生地とクリームの組み合わせが絶妙で、舌の上で優しく溶けていく。
ふわふわしていて、まるで雪や雲を食べているようだと思っている内に最後の一口を食べ終えていた。
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