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「ふふ……気に入って貰えたようだね」
「……」
心底嬉しそうに笑う青年に、つい目がいってしまう。
「……締めにどうぞ」
紅茶を注いだカップを差し出される。
「……頂きます」
「ふふ……」
ほぅ…と体の芯が解れるような感覚を味わう。
それで、初めて自分の緊張の糸が緩んだ気がした。
「落ち着いたかい?」
「はい……」
「……いい子だね」
大きな手でくしゃっと頭を撫でられる。
「……」
「エドガー、私は下で明日の分をするからお嬢さんは頼むよ」
「わーかったよ。しょーがねぇな」
「ふふ……お客様の前」
青年の顔に張り付いた笑みを見ると、一瞬凍りつくも、顔を逸らして舌打ちをする。
「チッ……かしこまりました!」
「……よく出来ました」
背を向けて出て行こうとしていた。
「あのっ」
声をかけられた事に気づき、振り返る。
「?何かな…?」
「貴方のお名前は……?」
初めて気づいたように「ああ…」と呟くと笑みを深くする。
「紹介がまだでしたね、エリック。エリック・ロード。キミは?」
「……アイリス………」
「ふふ……アイリスね…。しばらく滞在していきなさい。体はだいぶ疲れているようだから」
「失礼するよ」と言うと部屋を出て行った。
「……エリック……」
「……おい」
「かっこいいかも……」
「おーい、おいおい。聞けよ、バカ!!」
「分かったわよ。……耳痛いってば!」
エドガーはアイリスの摘んでいた耳を離すとフンッと腕を組む。
「お前を拾ったの、兄貴なんだぜ?しかも、タダ飯タダ宿タダ看病ってどんだけだよ、お前!」
「……耳元で叫ばないで……うるさいから」
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