7節:真実を知るのは今

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 ルートと話していると、時間が飛ぶようにすぎていく。  俺が眠気を感じてあくびをしたときには、すでに3時間が経過していた。  夢中になっていて気づかなかったが、今までの最長記録だ。  アンテークにうたがわれるといろいろとまずいので、俺は話をうちきり、もう帰るから、と彼女に言った。  いつもなら、ここで立ち上がってそのまますがたを消す。  ところが、今日だけはそういかなかった。  なぜなら、ルートが俺の服のそでをつかみ、ひきとめているからだ。 「あのね、あとひとつ言っておきたいことがあるんだけど……」  その声色がいつもとちがって、なにか意味深なものをおびているように感じられて、俺はそのまま立っていた。 「……なんだ?」 「言いづらいんだけどね、じつは……」  弱々しく言って口をつぐみ、うつむく。  よほど口にしづらいことなのだろう。  聞くほうにも覚悟がいりそうだ。  いつもの他愛のない話題ではない。  そう思って、心の中でかまえをとる。  なにを言われようと、うけとめるつもりだった。  だが、そんなつたない決心は、すぐにうちくだかれる。 「──オランダに行くの、3日後になった」  その一瞬、理解ができなくてたちつくしていた。  だが、すぐに事態をのみこむと、俺は声をあらげた。 「なんだって、そんな急な……あとひとつきも先だって、言ってたじゃないか」  ふいにおとずれた衝撃に、動揺をかくせなかった。  最初に言っていた話のとおりならば、オランダに亡命するのはあと1ヶ月もあと。  だから、もっといっしょにしゃべったり、笑いあったりできるのだと思っていた。  それなのにいきなりあと3日だなんて言われても、納得できるはずがない。 「わたしだって、おととい聞いたばかりだもの。そのときはうれしかったわ。でも……」  彼女の言いたいことはだいたいわかる。  こんな不衛生で命がけの隠れ家生活からぬけだせるなんて、それを喜ばないヤツがいるだろうか。  それこそ、ルートと彼女の家族が真に望んでいることだ。  本来なら、祝ってやるべき。  だが、それをなぜかできない自分。素直によろこべない自分。がまんならない自分が、今、ここにいる。
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