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こうして、無事に合併を終えた銀山高校。
高杉は涼子と教室で居残っていた。
これから直ぐある行事の数々をクラス委員である2人は的確に進めて行かなければならない。
高杉はチラリと涼子を見た。
彼女は笑っている。
「高杉君~伊達眼鏡何処で買ったの?」
高杉が何かを言う前に涼子が問う。
それも的確に高杉の隙を付くような言葉を選んで。
「あの・・・」
「あぁ~良いよ?素で話す気は無いんだよね~?大丈夫あたしそれ位は分かるからさ」
涼子は相も変らず笑っている。
「でも高杉君の素は見たいな~って思うんだけど駄目?」
高杉は驚愕していた。
「あっれぇ~?共学になってバレたから驚愕?プッ面白い~あたし天才!?共学で驚愕って・・・」
涼子の寒い親父ギャグ等、耳には入っていない。
高杉は内心焦っている。
自分は一切ボロを出していない。
ましてや初対面。
なのに何故彼女は自分が偽って生活している事を知っているのか。
疑問が浮かぶ。
「あぁ~あたし結構、勘が鋭いらしくて」
その疑問を口に出す前に答える涼子。
彼女の言う通り確かに勘は鋭いらしい。
人の考えて居る事まで先読みする辺り、高杉は関心すら覚えた。
「・・・何の事かサッパリ分からないですよ桂さん」
高杉はそう言って偽りの姿を通した。
「高杉君って賢いよねぇ~」
涼子は微笑む。
「知ってる?秘密がバレるのは本人が認めた時なの。」
涼子はそのまま続ける。
「証拠があっても99%真実でも、最期の有力な証拠は本人。本人が認めないとあたしの言う事が本当でも真実では無いの」
涼子はそう言って右手を高杉の前に差し出した。
「ねぇ?あたし面白い人大好きだからさ。よろしく☆」
それは握手を求める手だった。
高杉の脳内で危険だと誰かが呟く。
その手を取ればもう偽りの仮面だけでは生活できない。
何となくそう思った高杉。
だが、自然に左手が出た。
右手を差し出す涼子に高杉は左手を差し出した。
『これからもよろしくね』
『あぁ、分かってらぁ』
高杉の脳裏に声が響き渡る。
前世での記憶がまるでパズルのピースのように1つ埋まった。
「よろしく」
「はい・・・よろしくお願いします。」
握手。
過去と現実が重なった瞬間。
高杉の記憶はこれを堺にどんどん思い出していく事になる。
だが、まだ誰もそんな事を知る人物は居なかった。
続く
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