【始まり】

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話はもっと小さい頃に戻る。私がまだ3才の頃。 母方の祖母から聞いた話だ。 ある日昼寝していたはずの私、その部屋から楽しそうに笑う私の声がする。 『起きたのかねぇ』 祖母が声を掛ける。私は誰もいない角っこに向かって話している。 『?』 『み‐くんと遊んでたのぉ』 『?……そうかぃ、おやつ食べようか』 『うん』 祖母からすれば、一人遊びと思ったらしい。そして、違う日。 『ば‐ちゃ!』 私が嬉しそうに祖母に駆け寄る。 『雪!雪が降ってる!』 『?』 季節は夏である。祖母は、普段使わない物置だから、埃が雪に見えるのだろうと思ったらしい。ここまで話して少し分かった方もいるでしょうが、他の家族には全く見えない。目の前で、机に置いたコップが端から端まで動いても。 『この床傾いてる?』 《他の食器は動いて無いし!》 よく言われているラップ音がしても。 『上の人、うるさいなぁ!』 《いやぁ……上は空き部屋だし!》 とこんな調子である。でも小さい頃は、疑問をバンバンぶつけていた。その内、変な顔をされる。幼心に《言わない方が良いんだ》と悟った。 そして、時は4年生に戻る。
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