4人が本棚に入れています
本棚に追加
「エレナ様」
その少女は、自分の名前を呼んだ声に振り向く。
そこには同じくらいの歳の少年が立っていた。
鮮やかな赤毛の持ち主で、左手には女物のコートを持っている。
「参りましょう。
────今夜は、冷えます」
エレナは無言で頷く。
エレナが少年に向けたのは、感情が消え去った、蒼く透き通ったガラスの瞳。
無表情のまま、エレナは少年を見つめる。
エレナは差し出されたコートを受け取り、有り難う、と返して羽織った。
「……行きましょうか」
「はい……」
少年はエレナの隣に並び、無言で歩き続けた。
.
最初のコメントを投稿しよう!