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「有り難う。────ねぇ、エルダ。一つ頼まれてくれない?」
エレナは運ばれた料理が置かれたテーブルの前に腰掛け、スプーンを持ってスープを口に運んだ。
そのテーブルマナーは完璧である。
誰が何処からどう見ても、“優雅”そのものだ。
王家に生まれた者として、エレナは小さい頃から厳しい教育を受けてきた。
「何でしょう?」
「明日の夕方、東の助言者を訪ねるわ。車の準備をしておいてほしいの」
「!」
今度は両手にフォークとナイフを持ち、ローストされたラム肉を切り分けながら、エレナは言った。
だがエルダと呼ばれた少年は、大きく目を見開いたのだ。
「どうかした?」
「いえ、驚いただけです。エレナ様が彼女のことを、ご存知だとは思いませんでした」
「貴方も、知ってるのね。逢ったことはある?」
「ええ、あります。一度だけ、ですけれど」
「どんな人、だった?」
「美しい女性でした」
エルダは素直に感想を述べた。
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