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『本当の理由を言うわけにもいかないだろう。適当にあしらっておけばいい』
エレナの頭の中で声が響く。
「朱里」
思わず、エレナはその声の主の名を呼んだ。
「ジュ…、リ?」
「何でもないわ。理由は訊かないで頂戴。言いたくないの」
「し…、失礼しました。四時半頃でよろしいでしょうか」
「ええ。お願いするわ」
了解して、エルダはワゴンを引いて出ていく。
その足音が聞こえなくなり、エルダが部屋から遠ざかったことを確認して、
「朱里」
もう一度彼女の名前を呼んだ。
エレナ以外には誰もいない、広く豪華な部屋で、その声は凛と響く。
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