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『座らせてもらうぞ』
「ええ。どうぞ」
そう答えた途端、エレナの向かいの席が黒い闇に包まれた。
エレナはそれを、驚くことなく静かに見ている。
その闇はすぐにヒトの形を作り、やがて一人の女性になった。
漆黒の長髪をアップで一つにまとめ、唇には白い肌にあったピンク色のグロスをよぎらせている。
服は黒を基調として、肌寒い秋になっても肩を出したジャケットのようなデザインの服を着ていた。
ストレートなシルエットのロングパンツに、黒革のチョーカー。
アクセントとしてトップには、ゴールドの大きなリングが光る。
「貴女に聞きたいことがあるのよ」
「“東の助言者”のことだろう」
一瞬の沈黙が訪れる。
その静寂が、エレナの肯定を示していた。
「話が早いわね」
エレナはおどけたように言ったが、朱里は答えなかった。
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