すれ違う三つ

10/67
前へ
/73ページ
次へ
しばらく黙り込んで、そして、 「……“東の助言者”の何が知りたいんだ」 静かに口を開いた。 「彼女は、何者?」 「彼女たちもまた、数奇な運命に生まれたイキモノだ。エレナ、お前と同じようにな」 朱里が持つ黒曜石の瞳が、エレナを捉える。 しかし、その瞳はすぐに伏せられた。 「もう一つ。私に彼女を訪ねるように勧めたのは、どうして?」 「……彼女たちの運命は、お前の運命にも深い関わりがある。 エレナがどんな道を選ぼうとも、お前たちは逢う運命にあるんだ。 そして彼女たちは、必ずお前のチカラになってくれるだろう」 そこで一旦言葉を切って、テーブルに肘をついた。 エレナは朱里の行儀の悪さを咎めるようなことはしなかった。 食事の手は休めることなく、しかし、真剣な面持ちを崩すことなく、朱里の言葉の続きを待っている。 .
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加